大判例

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最高裁判所第三小法廷 平成5(あ)466 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人湯川二朗の上告趣意のうち、被告人の捜査段階における自白は警察官の自

白すれば罰金ですます旨の約束ないし利益誘導により、黙秘権を侵害して得られた

ものであるとして憲法違反、判例違反をいう点は、記録を調べても、所論のような

事跡は認められないから、その前提を欠き、その余の点は、憲法違反、判例違反を

いう部分を含め、実質はすべて単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれ

も刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

なお、所論は、捜査段階において弁護人依頼権の侵害があったとして、違憲をい

い、被告人の自白には証拠能力がない旨主張するほか、原審において、弁護人が同

旨の事実を主張し、被告人もこれに沿う供述をしているのに、原判決がこの点につ

いて何らの判断を示していないのは判断遺脱である旨主張する。記録によれば、被

告人が本件公務執行妨害、傷害の現行犯人として逮捕され警察官から弁解を録取さ

れた際、弁護人の選任のため弁護士会への連絡を求めたことが明らかであるところ、

被告人の右要求に対し警察官が弁護士会に連絡をしたのかどうかについては、証拠

資料が見当たらず、この点に関して、原審は、特段の事実調べをすることなく、何

らの判断も示していない。このような場合、控訴審裁判所としては、被疑者の有す

る弁護人依頼権が憲法の規定によって保障されたものであって、それが侵害された

場合には、被疑者の供述の証拠能力にも影響を及ぼすこどがあることにかんがみ、

職権によってでも右侵害の有無につき事実調べをして事実関係を明らかにする必要

のある場合があることも否定できない。しかし、本件においては、弁護士会への連

絡の有無の点についての審理に問題がないとはいえないとしても、捜査段階におけ

る被告人の自白を除く第一審判決の挙示するその余の関係証拠によって、本件罪と

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なるべき事実を肯認することができるものと認められるから、結局、所論の点は原

判決の結論に影響しないものというべきである。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項ただし書により、裁

判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

平成六年五月二四日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 大 野 正 男

裁判官 園 部 逸 夫

裁判官 可 部 恒 雄

裁判官 千 種 秀 夫

裁判官 尾 崎 行 信

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